スマホの普及でいつでも簡単に写真が撮れるようになり、写真が好きな人は多いのではないでしょうか。
写真家、西野壮平(にしのそうへい)さんの写真は私たちの知っている写真とは少し違っています。彼の作品は写真を撮るだけでは完成しません。
旅をしながら自身で都市を歩き、カメラに収めた何万枚もの写真を切って張り合わせることで別の作品、西野壮平の代名詞でもある「Diorama Map」(ジオラママップ)へと変貌を遂げるのです。
旅の道中で何が起こるかわからない、思いがけない出会いやアクシデント、その一期一会のすべてが彼の描く世界へと落とし込まれていきます。
かつては1年の半分を海外で過ごしてこられましたが、コロナ禍で海外での活動自粛を余儀なくされました。国内で新しいプロジェクトや作品にチャレンジし、歩みを止めない写真家・西野壮平さんの魅力についてお伝えしていきます。
写真家・西野壮平が表現するコラージュの世界とは?
コラージュとは?!
他の物を切り合わせて別の作品に仕上げることをコラージュと言います。
西野壮平さんの作品では「旅」をする中で出会った街の風景や思い出を写真に収め、何万枚もの写真を印刷し、カットして張り合わせ、コラージュしていくことで大きなキャンバスにその街全体が浮かび上がります。彼の作品の中には多くのストーリーが詰まっているのです。
写真家・西野壮平の生い立ち
1982年兵庫県西宮市で生まれ、幼少期はサッカー中心の生活を送り、小学生の時には日本代表にまで選ばれたそうです。幼い頃から細かい絵を描くことが好きで、写真に興味を持ったのは、高校生でお遍路をした時。写真を撮る為に歩くのではなく、歩いたプロセスを写真に残すことに楽しみを感じたそうです。その後、大阪芸術大学写真学科へ進み、2004年に卒業。ご結婚はされていませんが、インド人の彼女がいらっしゃいます。
大学では、写真を専攻されていましたが、写真やアートを学習するようなスタイルに馴染めず、大阪にある沢山のビルに上っては地上を眺める「空中散歩」をよくしたそうです。それがきっかけとなり、大学に在籍中の2003年より「Diorama Map」を作成するようになりました。
都内で活動されていましたが、2015年に拠点を静岡県沼津市の戸田に移しアトリエを構えました。理由は駿河湾越しの富士に魅了されたからだそうです。
作品制作中はアトリエにこもることが多いので、積極的に人と関わる時間を作りワークショップなども開催されています。料理が好きでキムチ作りなどのワークショップを開き、交流を大切にされています。
写真家・西野壮平の活動
第24回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)
2020年度、第24回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)に西本壮平の作品「Beppu」が入賞しました。
なぜ別府だったのかというと、別府市に拠点を置くNPO団体が、このままでは別府は廃っていくと考え、街にアートを取り入れいく目的で西野壮平に仕事を依頼。
地元の方が通いつめるお風呂にまで潜入して写真を撮らせてもらい、23,000枚もの写真とともに浮かびあがった巨大な別府の街はまさに圧巻。
大きな地図と化した写真一枚一枚には、温泉を愛し共に歳を重ねてきた人々や、別府の文化・生活風景などが写し出されています。
多くの人が関わり街の人たちと一緒に完成させた大作は観る者を魅了するでしょう。
別府のアートホテル「GALLERIA MIDOBARU」
アートを取り入れたホテル、GALLERIA MIDOBARU(ガレリア御堂原)が2020年12月に別府の温泉街にオープンしました。建物全体がアート作品でできています。別府という昔ながらの温泉街と自然の調和が絶妙なバランスで混在しまさに新感覚なホテル。そこに西野壮平の作品「Diorama Map Beppu 別府温泉世界地図」が展示されています。
GALLERIA MIDOBARU | ガレリア御堂原
住所:大分県別府市堀田5組
ウェブサイト:https://beppu-galleria-midobaru.jp
東京で開催中の西野壮平写真展
現在東京にあるキャノンギャラリーSにて、西野壮平写真展「線をなぞる~tracing lines~」が開催中。
これまでは海外の都市や街を中心に作品を創ってきたが、コロナの影響で活動拠点を日本にシフトし、街や都市ではなく自然と人々の生活にフォーカスした作品となっています。
キャノンギャラリーで展示されている「Mountain line Mt.Fuji」は都会から自然へと移行した彼の二作目。
富士山で行った撮影は3-4ヶ月に及び、実際に4回登り、他の山から富士山を眺め、またコロナ渦に富士山の周辺で起こった出来事なども写真に収められ、約2万枚もの写真をコラージュすることで西野壮平が創り出した「Mt.Fuji」が完成しました。
西野壮平の創造した作品を観ることで、彼が辿った道を同じように辿る追体験ができます。
写真展は入場無料で3月7日まで開催。この機会に是非とも西野壮平の世界観に触れてみたいですね。
西野壮平写真展
~線をなぞるtracing lines~
2022年1月20日(木)~3月7日(月)
10:00-17:30(日曜・祝日除く)
入場無料
場所:東京都港区港南2-16-6キャノンSタワー1階
キャノンギャラリーS
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